旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
(……お夕飯、作らないと)

 複雑に入り組んだ感情を振り切り、私はソファから立ち上がってキッチンへ向かう。
 七月七日、金曜。午後休を希望していた今日、帰りにスーパーへ立ち寄り、食材を買い揃えてきた。普段より手の込んだ料理を、できるだけ丁寧に作りたかったから。

 ――私たち夫婦は、碌に顔を合わせない生活を続けている。

 法人全体の休診日である木曜の他はシフト制、かつ土日もおおよそ出勤になる私と、基本的にはカレンダー通りの勤務とはいえ激務を極めている和永さんは、そもそもすれ違って当たり前だ。お見合いの日に伝えられていた通り、彼は帰らない日も珍しくない。

 早朝に家を出て、日付が変わった頃に帰宅する。それが彼にとっての、結婚前から続く日常だ。そこに私が入り込む隙はない。現在の役職に至る前の叔父も似たような日々を送っていたと、私も母や叔母づてに聞いて知っている。

 有事の際、彼らは家に帰って家族を守るのではなく、家族から離れて職務にあたる。警察官の仕事はそういうものだと、私も理解しているつもりだ。
 本当なら、叔父にとっての叔母と同じように夫を支えるべき立場にあるはずが、私はその役割すら拒まれている。好きに暮らしていいと言われてはいるけれど、あの人の迷惑にならないよう、余計なことで足を引っ張らないよう、自分なりに気を配って生活してきた。

(……ただ、今日は)

 きゅ、と唇を噛み締める。
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