旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「そういや、あんたんとこって昨日結婚記念日だったよね? おめでと~」
「くそっ、なんでお前まで知ってる!?」
「七夕に結婚式、インパクト的に忘れないでしょ普通。ウケる、柄にもなくロマンチックなことしちゃってさぁ」
「たまたま大安の日曜だっただけだ!」
「あっは、そう照れんなって~」

 何色かのバラとカスミソウを手早く切り揃えながら、榛奈は楽しげに笑い、それから小さく首を傾げてみせた。

「ていうか花束なんで今日なん? まさかあんた、記念日忘れたとかじゃないよね?」

 言葉の後半には責めるような調子を帯びた榛奈の質問に、ぐ、と呻いたきり押し黙るしかなくなる。
 溜息をついた榛奈から露骨に目を逸らす。「あんた絶対また徹夜で働いてたでしょ」と引いた声で尋ねてきた幼馴染は、呆れの滲んだ声を隠そうもしなかった。

「ヤバくない? 奥さんから嫌われ確定じゃん、あたしなら離婚考えるわ」
「やかましい、未婚の人間には離婚なんて関係ないだろう!」
「はァ~? なんだその言い方、奥様へのなけなしの詫び花束ショボくすんぞコラ!?」

 叫ぶような声をあげたと同時に頭が揺れ、返ってきたドスの効いた榛奈の声がそれに拍車をかける。
 相変わらず口の悪い女だ。中学時代までの付き合いを振り返ってみても、こいつとは男友達と同じやり取りしか交わしていない。だが。
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