旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「ていうかさ、……織田原さん、元気にしてる?」

 男勝りな榛奈の声が、急に神妙そうに抑えられる。
 さっきまで顔を突き合わせていた同僚の名前が急に出てきたせいで、なんの話かと一瞬戸惑ってしまう。

 織田原が離婚したのは十年前。それから半年だったか一年だったかが過ぎた頃、偶然が重なって榛奈を織田原に引き合わせたことがあった。そのときは特段進展があったわけではなかったのに、なにがきっかけになったのか、数年経ってから連絡を取り合うようになったらしい。
 喫煙室で見かけたばかりの、黒いクマの刻まれた同期の顔を思い返しながら、事実だけを掻い摘んで伝えることにする。

「さっき喫煙室で会ったな」
「そっか。良かった、元気そうで」
「いやお前の元気判定どうなってる、ガバガバすぎないか?」
「ああ、なんか既読つかなくなって結構経つからさ、倒れたりしてないならって安心しちゃった……そうだよね忙しいよね、結婚記念日忘れる奴もいるくらい激務なんだもんね警察の人って」
「いちいち俺まで蹴り直すな」

 相槌代わりにツッコミを入れながら、「ウザいとか思われてないといいな」と呟いた榛奈の顔から露骨に目を逸らした。そのまま視線を落とし、整えられていく花束をじっと眺める。
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