旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 自分は恋をした経験がない。
 だから、恋愛相談などという奇怪な話題を持ちかけられても、実のある助言は一切できない。

 織田原は織田原で、自ら榛奈の話を切り出してくることがないから、いまいち腹の(うち)が分からない。離婚歴を気にしているのもあるだろうが、榛奈とのことは榛奈から聞くまで知らなかった。本人からは『お前あの子の友達だろ、逆に話しづれえわ』とも言われている。
 ただ、真面目に考えているからこそ軽率に口を割らない感じはする。織田原はそういう奴だと思う。

 真剣に恋に溺れている人間は、自分の目には眩しすぎる。
 自分にはそういう情熱はない。あるのは、せめて誠実でありたいという気持ちだけだ。

 男女の関係において、愛情が根底にない誠意は役に立たない――それが裏づけられるような経験ばかり重ねてきた自分にとって、〝誠実であること〟だけを希望してきた薫子は、出会ったその日からすでに稀有な存在だった。

 市条本部長の姪という彼女のステータスは、それだけで効果的だ。
 元々敬遠がちだった下世話な誘いを断りやすいし、そもそも結婚後はそうした誘い自体が減った。
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