旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
実は、以前にも似た光景を見かけたことがあった。
行きつけの花屋がある人には見えないけれど、私には和永さんについて知らないことがあまりに多すぎて、まぁ行きつけの花屋くらいあるのかな、という結論に辿り着くより他にない。
前に見かけたときも、私は今のように慌てて目を逸らして俯くしかできなかった。これからも仮面夫婦を貫いていく気なら、仮に目が合ったとして、ただ笑って手でも振ればいいだけの話なのに。
深く俯きながら、私は足早に花屋の前を通り過ぎていく。
あんなふうにあの人と親しく話せてしまう人もいるんだな、いや、そうできていないのはむしろ私だけなのかも……重くなった足取りを自覚しながら、溜息が零れる。
(知り合いなのかな。あの店員さんと)
チリ、と胸の奥が焦げるような痛みに震える。
今日はなにか言い争いをしている様子だけれど、前に見かけたときはいずれも、あの店員の女性は朗らかに笑っていたし、彼も呆れに顔を歪めたり苦笑いしたりとかなり表情豊かに応じていたと思う。
あんな顔を、和永さんは私の前で絶対に見せない。
私の前では表情筋を動かすことすら珍しい。
行きつけの花屋がある人には見えないけれど、私には和永さんについて知らないことがあまりに多すぎて、まぁ行きつけの花屋くらいあるのかな、という結論に辿り着くより他にない。
前に見かけたときも、私は今のように慌てて目を逸らして俯くしかできなかった。これからも仮面夫婦を貫いていく気なら、仮に目が合ったとして、ただ笑って手でも振ればいいだけの話なのに。
深く俯きながら、私は足早に花屋の前を通り過ぎていく。
あんなふうにあの人と親しく話せてしまう人もいるんだな、いや、そうできていないのはむしろ私だけなのかも……重くなった足取りを自覚しながら、溜息が零れる。
(知り合いなのかな。あの店員さんと)
チリ、と胸の奥が焦げるような痛みに震える。
今日はなにか言い争いをしている様子だけれど、前に見かけたときはいずれも、あの店員の女性は朗らかに笑っていたし、彼も呆れに顔を歪めたり苦笑いしたりとかなり表情豊かに応じていたと思う。
あんな顔を、和永さんは私の前で絶対に見せない。
私の前では表情筋を動かすことすら珍しい。