旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 彼の座るソファまで歩み寄りながら、冷静に尋ねたつもりだったけれど、最後に分かりやすく疑問符が浮かんでしまった。
 立ち上がった和永さんが、私に向き直ったからだ。
 目を泳がせてたじろいでしまってから、私は呆然と彼の顔を見上げる。すると、質問をさせる暇すら与えたくないとばかり、和永さんは一方的に切り出し始めた。

「昨日はすまなかった。夕飯もありがとう、……食べたのは今朝だが……」
「あっ、はい。それは良かったです」
「それと、これはいつ用意したんだ?」

 わずかに躊躇を見せてから、和永さんは苦い顔でテーブルの上を指差した。
 クリアファイルに入ったままの届の、彼に記入してもらう欄には、まだなんの文字も刻まれていない。
 隠すのもごまかすのも意味がないな、と正直に話すことにする。

「結婚してすぐの頃から持ってました。書いたのは昨日の夜ですけど」

 はっきり言いきると、そのまま沈黙が舞い降りた。
 今度のそれはかなり長い。気まずさに目が泳ぐ。彼の顔色は相変わらず青いままだ。考えてみれば昨日も夜通し働いていたのだろうし、早く休んだほうがいいのでは、と心配になってくる。
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