旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「あの……手際、良すぎないか? 邪魔にしかなれない気がして見てるしかできなかったんだが」
「え? ええと、いつもこんな感じですよ。それに今日は温め直しばかりですし」

 一緒に召し上がりますよね、と続けて尋ねた自分の声は、我ながら落ち着きがなかった。 離婚の拒否と花束の件もあって、訊きながら大いに目が泳いでしまう。

「ああ、君が良ければ。ありがとう」
「い、いいえ。じゃあいただきましょうか」

 普段よりも早い時間の夕飯になった。
 ダイニングテーブルにふたり分の食事が並んでいるさまを、ついじっと見つめてしまう。

 昨日も並べた。こんなふうに。
 主菜も副菜も、スープの果てまで丁寧に作り込んだ昨日のメニューに比べると、今日はかなりシンプルなメニューだ。なんだか皮肉だな、とつい苦笑が零れる。

 向かい合わせに座り、ふたりで「いただきます」をしてから箸を動かし始める。
 静かに食事が進む中、なにか話を切り出したほうがいいかどうか迷った。そのとき、対面から小さく声が聞こえてきた。

「美味しい」
「っ、はい?」
「……美味しい。ちゃんと伝えたことがなかった」

 聞き間違いかも、とつい訊き返してしまったけれど、そうではなかったみたいだ。二度目はためらいがちに、それでもはっきりと伝えてくれたのが嬉しくて、ふと顔が綻ぶ。
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