旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「花束を渡した後に俺の分まで夕食を作ってくれたことも、一緒に食べてくれたことも、俺が合わせると言った休みの予定を君が調整してくれたことも、こうやってわざわざ俺の自己満足に応じてくれていることも……さっき俺が『もう少し連れ回してもいいか』と訊いたときに碌に警戒しなかったこともだ。君の言動はどれもこれもちぐはぐすぎる」
「……っ、それは、」
「言っていることもやっていることも、離婚したがっている人間らしくない」

 断言とともに、指がネックレスのトップを摘んでくる。
 わざと肌ごと掠めているとしか思えない。触れたところから熱が広がるせいで、息が浅くなる。肌も赤くなっているかも、と羞恥はなおさらひどくなっていく。

「これもだ。俺が誕生日にあげた物だろう、なんで今日着けてきてくれた?」
「……気を、遣いました。私なりに」
「それだけか?」

 苦し紛れに吐いた返事にあっさり問い返され、今度はうまく返せなくなる。
 そうです、と答えればいいだけだ。それなのに言えなかった。少なくとも、すべてを見透かすような目に見つめられている間は、嘘なんてとてもつけそうにない。

 聴取でもされているみたいで緊張が走る。
 もしかしたら和永さんは、あえて私が逃げられない場所に連れてきて話を切り出したのかな、と思う。寝室という私にとっての逃げ場があるマンション内でのやり取りをわざと避けたのかもしれない、とも。
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