旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 そもそも、破談の原因は相手の男だという目測は随分前から立っている。『誠実であってほしい』と伝えられた時点で勘づく部分はあったし、なにより『不貞を働かないという意味なら』と答えたときのほっとした顔……完全にそういう苦い経験をしたことのある人の顔だった。

 だいたいが、親を安心させたいからと結婚を考えるような人だ。やはり浮気の線は限りなく薄い気がしてしまう。

 それでも彼女は、頑ななまでに離婚を撤回しない。
 今の生活がどうしても嫌になったなら実家に帰ることだってできるだろうに、それもしない。というより、不満を燻らせている気配自体が希薄だ。

 強いて言えば、なにかを堪えるような緊張感を常に抱えている感じはする。
 普段は見せないが、ふとした折に思い詰めた表情を覗かせる瞬間がある。

(……知りたい)

 追及したい。君がなにを考えてこの矛盾まみれの言動を繰り返しているのか、正しく理解できるまで何度でも。
 その衝動は、離婚届を渡された日を境にどんどん膨らんでいって、今日とうとう制御が利かなくなった。

 ――なんでこんなに頑張ってるんだ、自分は。
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