旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「結局、奥さんってなんで離婚したいの?」
「それが分からなくて困ってる。昨日はちゃんと訊こうと思って時間を作った、でも実際に話してみたら取り調べみたいになってしまって怯えさせただけだった」
「ワオ……」
同情の滲む視線を向けられ、強引に抱き寄せてキスしようとしたことは伏せておこうと打算が働いた。
昨晩の自分は完全にどうかしていた。あの失態を思い出すだけで息が浅くなる。
ちょうどそのとき、お待たせしましたぁ、と声がかかった。
「唐揚げ定食と生姜焼き定食です~」
「あ、唐揚げ俺っス~」
「はぁい、毎度どうもねぇ」
女将が運んできた定食がふたつ、店の奥側のふたりがけテーブルにきつきつと座る自分たちの前に並べられる。織田原の返事に女将がにっかりと笑い返す様子を、やはりぼうっと見つめる。
柔道の有段者である織田原はかなりの体格の持ち主だ。同じ盆に並ぶ、似たような内容の定食が、自分のそれよりひと回り小さく見える。その錯覚にはだいぶ前から慣れている。
話を一旦置いておき、それぞれ黙々と定食を平らげた。
初めて訪れたときから十数年、この店の飯は変わらず美味だ。だが、箸を動かしながらふと脳裏を過ぎったのは妻の顔と、彼女の作る料理だった。
「それが分からなくて困ってる。昨日はちゃんと訊こうと思って時間を作った、でも実際に話してみたら取り調べみたいになってしまって怯えさせただけだった」
「ワオ……」
同情の滲む視線を向けられ、強引に抱き寄せてキスしようとしたことは伏せておこうと打算が働いた。
昨晩の自分は完全にどうかしていた。あの失態を思い出すだけで息が浅くなる。
ちょうどそのとき、お待たせしましたぁ、と声がかかった。
「唐揚げ定食と生姜焼き定食です~」
「あ、唐揚げ俺っス~」
「はぁい、毎度どうもねぇ」
女将が運んできた定食がふたつ、店の奥側のふたりがけテーブルにきつきつと座る自分たちの前に並べられる。織田原の返事に女将がにっかりと笑い返す様子を、やはりぼうっと見つめる。
柔道の有段者である織田原はかなりの体格の持ち主だ。同じ盆に並ぶ、似たような内容の定食が、自分のそれよりひと回り小さく見える。その錯覚にはだいぶ前から慣れている。
話を一旦置いておき、それぞれ黙々と定食を平らげた。
初めて訪れたときから十数年、この店の飯は変わらず美味だ。だが、箸を動かしながらふと脳裏を過ぎったのは妻の顔と、彼女の作る料理だった。