旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「好きならなおさら……どうすればいいんだ俺は……?」
「あっ、振り出しに戻っちゃった」

 デカい図体で口元に手を添える織田原を見ていたら、うう、と呻きが漏れた。まるで自分らしくない呻きだ。自分が自分ではなくなってしまったみたいで、ぞっと背筋が強張った。
 自分が恋愛感情を知ることは生涯ないと、それでいいと思って生きてきた。恋を知った自分なんて自分が一番信じられない。信じられないのに、自覚してしまった今、薫子の顔を思い描くだけで胸がどくどくと高鳴る。

 利き手で胸を押さえながら、対面に視線を向けた。
 まるで子供の成長を見守る親みたいな顔で微笑む織田原の顔が、唐突に癪に障る。

「……そういうお前はどうなんだ」
「えっ、なに急に?」
「愛だなんだと語るわりに、お前自身は煮え切らない関係をよく三年も続けていられるものだと思ってな」
「うへぇ耳が痛ぁい……」

 あえて相手の名前は出さなかったが、織田原は触れられたくなさそうな顔を隠しもせず、へらりと苦笑を浮かべた。
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