旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「ただいま」

 時刻は午後九時手前、急ぎ足で玄関からリビングへ進んでいく。
 エアコンは稼働していたが、明かりはついていなかった。いないのか、だが薫子は今日出勤しているはず……そう考えてから苦々しく顔が歪む。

 彼女の勤務形態も仕事内容も、以前はほとんど気に懸けなかった。
 過干渉にならないためにもそのほうがいいとすら思っていた。それなのに。

『お前が好きになっちゃってんだ』

 腑に落ちてしまった以上は言い逃れできない。したいとも思えない。
 寝室にいるのかもしれない、まだ九時にもなっていないのに、でも彼女は元々あまり夜更かしをしない気がする――あれこれと考えを巡らせながら、真っ暗なリビングの照明をオンにする。

 そしてなんの気なしにソファへ目を向け、ぎくりと全身が強張った。

「……薫子?」

 ソファの上には、肘かけに首を乗せてぐったりと横たわる妻がいた。
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