不器用な君のしぐさ
あの日から、司馬さんは廊下で会う度に「おう。」と声を掛けてくれるようになり、それを見た周りの女子社員たちからは「司馬さんと仲良いんですか?!」なんて訊かれるようになってしまった。
そして、ある日の午後。
休憩終わりに社員食堂から総務課に戻って来ると、そこには司馬さんが壁に背をつけ立っていた。
「お疲れ。」
「お疲れ様です。」
「ちょっといいか?手伝ってほしい事があるんだ。」
司馬さんがそう言うと、近くに居た女子社員が「わたしが行きましょうか?!」と話に食いついてきたが、司馬さんはクールに「君は自分の仕事をして。」と言い、それから「清村、行くぞ。」と秘書課の方へ歩き出した。
「あ、はい。」
そう言って、慌てて司馬さんについて行くわたし。
わたしは「あんな冷たい言い方しちゃっていいんですか?嫌われちゃいますよ?」と意地悪のつもりで言ったのだが、司馬さんは相変わらずの無表情で「嫌われるのなんて大歓迎だ。」と言ったのだった。
それから秘書課に着くと、わたしは司馬さんに「で、手伝いとは?」と訊いた。
すると、司馬さんは首でテーブルの上を指し、「これ。」と言ったのだ。
そこには、大量の書類が積み上げられていて、わたしは「え、、、これを?どうするんですか?」と訊いた。
「秘書課の重要書類の保管期間は8年と決まってるんだが、それ以降は処分することになっている。」
「、、、ってことは、これは保管期間が過ぎた書類、ってことですか?」
「正解。」
司馬さんはそう言うと、「これ全部、シュレッターにかけなきゃいけないんだ。だから、その手伝いを頼む。」と言い、積み重なった大量の書類の上に手を置いた。