不器用な君のしぐさ
「え、わたし、、、殺されるんですか?」
わたしは身構えながらそう訊くと、司馬さんは「はぁ?」と言い、それからわたしが「口封じされるのかと、、、」と言うと、「まぁ、そんなようなもんだ。」という言葉が返ってきた。
「え!わたし、やっぱり殺されるんですか?!」
「ちょっ、あー、馬鹿。物騒なこと大声で言うなよ。」
「だって、司馬さんが、、、口封じって、、、」
「口封じイコール殺されるって、お前の頭ん中はどうなってんだよ。」
司馬さんはそう言って、面倒くさそうにわたしから目を逸らした。
「じゃあ、わたしは戻ります。」
と秘書課のドアを開けようとすると、司馬さんはドアに手を付きそれを阻止した。
「お前、さっきの、、、誰にも言うなよ。」
「さっきの、とは?」
「だからぁ、、、俺が、、、」
「じゃあ、誰にも言わないので、珈琲奢ってください!」
わたしがわざとちょっと上から目線でそう言うと、司馬さんは「そんなんでいいのか?」と言った。
「えっ?じゃあ、、、ご飯!連れてってください!」
冗談のつもりでそう言ってみると、司馬さんはいつものクールさで「分かった。」と答えたのだ。
「えっ?い、いいんですか?!」
「あぁ。」
「じゃあ、デート一回で手を打ちましょう。」
「デート?」
「二人でご飯行くのは、デートとは言わないですか?」
「さぁ、どうだろな。」
司馬さんはそう言うと、私が渡した茶封筒から書類を出し、デスクに置くと「今日は定時であがれるのか?」と訊いてきた。
「はい!」
「じゃあ、定時で上がったら駐車場の前で待ってろ。」
「分かりました。」
司馬さんはわたしと目を合わせず、「戻っていいぞ。」と言いデスクにつくと、わたしは「はーい、失礼しまぁす。」と返事をして秘書課をあとにした。
わたし、司馬さんとデートするの?
社内一のイケメンと?
それって、ある意味でヤバいような、、、
司馬さんじゃなくて、他の女子社員に殺されたらどうしよ。
秘密にしなきゃ。
そう思いながら、わたしは給湯室に向かい、珈琲を淹れてから総務課へ戻ったのだった。