不器用な君のしぐさ

それから定時になり、わたしは周りの人たちが先に退勤して行くのを見送ってから、一番最後に総務課を出た。

先に帰ってしまうと、誰かに司馬さんと一緒に居るところを見られてしまう可能性があるからだ。

そして、エレベーターでビルの一階まで降り、ゲートを抜けて駐車場へ向かうと、一台の黒いハリアーが停まっているのが見えた。

よく見ると運転席には、司馬さんの姿があり、いつものクールな表情でわたしを待ってくれている様子だった。

わたしは急いで司馬さんの車に駆け寄った。

すると、わたしに気付いた司馬さんは親指で助手席を指した。

え、助手席に乗っていいの?!

そう思いながら、わたしは急いで助手席側に回り、司馬さんの車の助手席に乗り込んだ。

「お疲れ様です。」
「お疲れ。」
「遅くなってすいません。」
「いや、俺もまだ来たばかりだから。」

そう言って車を出す司馬さん。

あれ?
「遅い。」とか文句の一つでも言われるかと思ったけど、言われなかった。

どう見ても来たばかりってより、少し待っててくれてたような気がするけど、、、

「何か、すいません。」
「何が?」
「図々しく、ご飯連れてってください!なんて言っちゃって、、、」
「いや、あの書類は大事な書類だったから届けてくれて助かった。それに"ご飯"じゃなくて、"デート"なんだろ?」

そう言う司馬さんは、相変わらず無表情で、多分冗談のつもりで言ってくれてるんだろうけど、冗談に聞こえない。

この人は本当に何を考えてるのか分からない人だ。

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