不器用な君のしぐさ

そして、司馬さんが連れて行ってくれたのは、司馬さんの友人が営む洒落た居酒屋だった。

「お!一颯が女の子連れて来るなんて珍しいなぁ!」

そう言ったのは、高身長で体育会系のイメージの気さくな感じの司馬さんの友人。

司馬さんは「ただの同僚だよ。」と言い、窓際の角にあるテーブル席についた。

「はじめまして、戸張っす!一颯とは高校からの仲なんですよ!」
「そうなんですね、はじめまして。清村紗和と申します。」
「紗和ちゃんね!おい、一颯。紗和ちゃん、俺に譲ってくれよ。俺、結構タイプなんだけど!」

戸張さんがそう言うと、司馬さんは無表情のままメニュー表を開き「ダメだ。それより飲み物。清村は何がいい?」と言い、メニュー表をわたしに見せてくれた。

「あ、えっとぉ、、、じゃあ、烏龍茶で。」
「酒飲まないのか?」
「いつも飲み会の時に付き合いで飲むくらいで、お酒自体はあまり好きではなくて。」
「そうなのか。じゃあ、俺も烏龍茶。」

司馬さんがそう言うと、戸張さんは「はいよー!」と注文を受け、厨房へと入って行った。

「戸張さんって、気さくな方ですね。」
「ただのチャラい女好きなだけだよ。」

司馬さんがそう言うと、厨房から「一颯〜!聞こえてるぞー!」と言う戸張さんの声が聞こえてきて、わたしはクスッと笑ってしまった。

「それより、何食う?好きなもん頼んでいいぞ。」
「じゃあ、遠慮なく!」

そうしてわたしは、メニュー表を見ながら何品か注文をし、頬杖をつきながらそれを見ていた司馬さんは「清村って、意外と食うんだな。」と相変わらずの無表情でわたしを見ていた。

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