不器用な君のしぐさ
「じゃあ、とりあえず、」
そう言って、わたしたちは烏龍茶のグラスを持ち「お疲れ様です。」と乾杯をした。
「司馬さんって、意外と話すんですね。」
「そうか?」
そう言い、司馬さんは小皿を手に取り、冷しゃぶサラダを取り分け始めてくれた。
「あ、すいません!わたしがやります!」
「いや、いい。俺が、口封じの為に連れて来たんだから。」
司馬さんはそう言って、黙々と小皿に冷しゃぶサラダを取り分け、先にわたしにそれを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
司馬さんって、あまり関わったことも話したこともなかったけど、意外と良い人なのかも。
クールで表情に出ないから冷たい人に見えるけど、本当は不器用なだけで優しい人なんじゃないのかな。
「何だよ、人の顔見て。」
わたしの視線に気付いた司馬さんが言う。
「あ、いえ!何でもないです!じゃあ、いただきます!」
そして、わたしは手を合わせ、割り箸を割って冷しゃぶサラダを食べ始めた。
「ん!美味しい!何このドレッシング!めちゃくちゃ好み!」
わたしがそう言いながら食べていると、一瞬ではあるが司馬さんが微かに柔らかい表情を見せた。
「あ、やっぱり!司馬さん今ちょっと笑いましたよね?」
「笑ってない。」
「今笑いましたよ!」
「いや、笑ってない。いいから、黙って食え。」
そう言って、司馬さんはわたしの額にデコピンをした。
「いっっったぁーい!司馬さん!ちょっとは加減してくださいよ!」
「清村があまりにもしつこいからだ。」
「だって、司馬さん笑ったのに!」
「もう一発やっとくか?」
「いえ、何でも無いでーす。」
無表情なはずなのに、何だか少しずつ司馬さんの表情が見えてきた気がした。
やっぱり、司馬さんは不器用なだけなんだなぁ。