宇宙で、推しとウエディング!?
「水が飲みたくなったら、コレをつかえ。シャボン玉みたいにゆっくりさせば、こわれない。万が一、破裂しても、あわてるな。この桜の木の粘液が入った霧吹きで、穴はすぐ修復できる。ただし、泣いたりするのはよくない」
「なんで?」
「内側からの水分には、とくに弱い」
「……てことは、汗も?」
「汗?」
「え? 暑いときに、汗かくじゃん。汗も体から流れてくるし、ダメってことだよね」
「ブロッサム星人には、そういうのはないな。汗というものは、流したことがない」
 えー! 同じ人間なのに、星によって、機能が違うってことなのかな。
 まあ、汗を流しているサカエくんも、想像できないけど。
「わかった。泣いたり、汗をかかないように、がんばるね」
「よし。じゃあ、行くぞ」
「どこに?」
「花嫁を探しに決まっているだろう。この近くにいるはずだ」
「……はあい」
 すたすた歩いていくサカエくんの後ろを、着いていくわたし。
 砂丘に生えている、背の高い松のような木を見上げながら歩いていくと、開けた場所に出た。
 見渡すかぎりの、芝生。
 そして、ところどころ木々が密集して生えている。
「なんだか、ここだけ雰囲気が違うね」
「もうすぐここに、惑星チロルのアンドロイドたちが集まってくるはずだ」
「え、なんで?」
「まあ、見ているといい」
 サカエくんといっしょに、しばらくそこで待っていると、遠くの方から機械音が近づいてくる。
 ゴウン……ゴウン……
 キュイン……キュイン……
 ガシン! ガシン!
 ブウウーン……ブウウーン……
 様々なサイズ感を感じさせる、駆動音。
 小さなものから、大きなもの。スリムだったり、ゴツかったり。
 人間に近い見た目ほど、機械音が少ないかなあ、と思った。
 そんなアンドロイドたちが、ぞろぞろと、この開けた芝生の上にやってくる。
 なかでも、特に可愛い子がいた。
 フワフワの、天然パーマっぽい羽毛のような金髪をした、カントリーワンピースを着た、女の子アンドロイドだ。
 まさか……あの子なのかな。
「ねえ、サカエくん。どの子なの? あの……金髪の子?」
「まだ、来ていないようだな」
 なーんだ。あの子じゃないんだ。ホッと、胸をなでおろす。
「みんな、ぞくぞくと集まってくるけど、何が始まるの?」
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