宇宙で、推しとウエディング!?
「ポピー。わたし……くやしい。くやしいけど……ポピーのコト、嫌いじゃない。むしろ、優しくて、とってもイイ子だと思う。だから……だから、サカエくんの花嫁は、ポピーに……ううっ」
 言葉がつまって、言いよどんでしまう。
 じわじわと涙があふれてきて、その場で床に丸まる、わたし。
 ふたりのことを祝福したいのに、くやしい気持ちがどんどんわき出てきて、止められない。
「サカエくん……。幸せになってね」
「シュリ。まだ、ポピーは花嫁候補の段階だぞ」
「そ……そうだった」
 ポピーの他にも、まだいるんだった、花嫁候補。
 サカエくんの、地球ジョークであってほしかった。
 なんだか、涙も引っこんじゃったよ。
「雪之町さん、シュリさん。あの、ひとついいですか?」
 キュイン、と律儀に、片手を上げるポピー。
「どうしたの? ポピー」
「私は、目的の星マークの場所に、一番にたどり着きましたが、まだ例の”星形のモノ”を見つけていません。なので、まだ勝負は続いているんですよ」
「……ええッ!」
 勝負……まだ、続いてる?
「わたし、まだ、負けてないの? ポピーと、勝負できるの?」
「ええ。シュリさん」
 あたたかくて、優しい声でうなずいてくれる、ポピー。
「ポピー。位置情報を見ていた限りでは、だいぶ前から着いていたはずだが。見つけられなかったのか?」
「雪之町さん。私の記憶回路は、すでに古いものから消えて行ってしまっているんです。このお城のような研究に住んでいた時のことも、次々と……」
 わたしは、息を飲んだ。
「……え? どういう、こと?」
「すみません……シュリさん。まずは、目的のものを探しましょう」
「……う、うん」
 ポピーにうながされ、わたしはあたりの棚を開けてみたり、姿見の裏をのぞいたりしてみる。
 でも、さっきの会話が気になって、集中できない。
 ポピーは、ここに何が隠されているのか、知ってるのかな。
 ここに住んでいたってことは、思い出の場所、ってことだよね。
 でも、その時の記憶が、だんだん消えていってるって言ってた。
 それじゃあ、こうしている今も、ポピーの記憶は……。
 考え事をしながら、のろのろとクロゼットを開けてみる。
 すると、さまざまなモノが敷きつまっているものの奥の方に、濃い影が見えた。
「……何か、ある?」
 それに、うんと手を伸ばしてみる。
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