街角ファンタジーボックス

4. 喫茶店

 駅から少し離れた所に可愛い看板の喫茶店が在る。
ずっと前から営業しているプリティア。
 昼になるとドアが開き、静かな音楽が聞こえてくる。
ジャズだったりボサノバだったりクラシックだったり、、、。
 マスターは初老のおじさん。 いつも笑顔でいろんな話をしてくれる。
「あんたんとこのじいさんは元気か?」 たまの気晴らしに飲みに来た奥さんたちに話しかける。
 以前は町内会の役員もしていたそうでなかなかに顔が広いおじさんだ。

 時にはお説教だってする。
「あんたなあ、子供にガミガミ言うもんじゃないよ。 気に障ることは有ると思うけど自分で気付かせないかん。 どうしてもダメだったらその時はやらないかんが、最初からあんたがあれやこれや言うのはまずいんじゃないか?」
 補導員までやっていたおじさんのこと。 さすがに聞かない親は居ないという。
「お説教しちまったな。 まあコーヒーでも飲んでゆっくりして行ってよ。」
 ニコッとされてコーヒーを出されるのである。 飲んでいるとやっと気分が落ち着いてくる。

 時には高校生たちの恋の相談も受ける。
「そんなこと言ったって相手の子が本当に好きかどうか分からないだろう? まあそこは勇気を出して聞いてみるんだな。」
落ち込んでいる女の子を励まし、ショートケーキを目の前に置く。
 「あんたは笑ってたほうが可愛い。 それでみんなを元気にしてやってくれ。」
 時には失恋したばかりの男もやってくる。 「またかい。 ダメだなあ あんたは。」
遠慮せずに言うものだから男もしょげ込んでしまう。
「そうやってグチグチ言ってるから誰も付き合おうとは思わないんだよ。 ちっとはシャキッとせんかい。」
そう言って肩をバシッと叩く。 「すいません。」
 「謝ることなんか要らねえよ。 自信を持って行きなさい。 まだ若いんだろうがよ。」 「もう40ですけど、、、。」
「40? まだまだ子供じゃ。 ぶつかって行け!」 マスターはそう言って男を送り出すのだ。
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