とある村の怖い話

興奮したトミーの声のあと、木造の古い家屋が何件かカメラ内に映し出された。
「電気がついてるね」

動画を見て夏美が呟いた。
山の中にある集落がとっくに廃村になっていて、その名残があるのではない。
トミーが見つけた場所には本当に人の気配が蠢いているのだ。

『助かった。これでもう大丈夫。元の生活に戻れます』
興奮したトミーが最後にそう言うと、ブツリと動画が切れてスマホ画面が暗転した。
「もう! 最近こういう終わり方ばっかりだよね」

もっと見たかったようで夏美は頬を膨らませている。
「あれれ? トミーが行方不明になったのは本当のことだって、信じてたんじゃなかったんだっけ?」

横からニヤついた顔の雄一が夏美の肩をつつく。
ここ最近のトミーの配信を見て、夏美もだんだんとこれがフェイクではないのかと思い始めているようで、その顔には苦笑いが浮かんでいる。

「でも、ニュース番組は本当だよね? テレビでも行方不明者の名前が出てるし」

「それが不思議なんだよな。トミーの配信は限りなくフェイクに近いけれど、本物のニュース番組が取り上げてるってところで、わからなくなる」
雄一が腕組みをして考え込んだ。

いくらインフルエンサーの頼みだと言っても、実際のニュース番組がフェイクニュースを流すことに協力するとは思えない。
そこがわからないところだった。

「今日はトミーチャネルにしても夏美ちゃんにしても大きな変化がある日でした。明日どうなるのか、楽しみですね」
達也のおどけた声がして、画面が暗転した。

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