不器用なプロポーズ
彼の熱と唇と ~四日目 翻弄~
※軽めですが性的表現が含まれています。ご注意下さい。
「あの、社長これには理由(わけ)が……っ!?」
連れ込まれるように入ったエレベーターの中、説明を聞いてもらおうと口を開いたけれど、同時に身体をぐいと引き寄せられて、よろめいた。
背中にどんっと壁がぶつり衝撃が走る。
同時に三嶋社長の黒い瞳が近づいて、噛みつくみたいに口付けられた。重なった唇から、熱過ぎる体温が伝わる。見開いた私の目に、彼の髪が一房、額に落ちてくるのが見えた。
どう、して……っ。
抵抗するのを許さないとでも言う様に、壁際に押さえつけられた身体は逃げる隙間さえ見当たらない。
「んぅ……っ!」
話がしたくて、力を込めて離れようとしているにも関わらず、彼の腕は微動だにしなかった。
その間にも、口付けは執拗さを増していく。
重なった唇を無理矢理こじ開けられ、熱い舌を押し込められて、パニックを起こしながら、息苦しさに喘ぐ様に呼吸した。僅かな隙間から酸素を取り入れるけれど、すぐに塞がれまた苦しさが込み上げる。
掴まれていた腕は頭上まで移動させられて、身動きが取れないまま、深い口付けに翻弄されていく。
彼に連れ去られる前にされたキスとは違う、性急で身体ごと奪われる様な感覚に、快楽と恐怖の二つが混ざった。
「んっ……ふっ……ぅんっ」
「帰りたいとっ……俺から逃げたくて、外に出たのか……っ!」
我を失ったかの様に、三嶋社長が低い声で吐き出した。荒い息が私の頬を震わせる。
スーツ越しだというのに、私の身体を覆う彼の肌は熱かった。
「ち、がっ……!」
「一週間だけ……っそれだけでいいと言ったのに……それすらもっ、受け入れては貰えないのかっ」
違うと言いたいのに、誤解だと、逃げたわけではないと伝えたいのに、塞がれた唇からはくぐもった声した出せなかった。
熱い舌で口蓋や歯列をなぞられ、口内を弄られて、次々と与えられる快感に頭も身体もついて来られない。
「やっ、待っ、て……っ」
「嫌だ。まだ駄目だ、まだ、君を手放すのは無理だっ!」
痛いほどの叫びが、耳朶に響く。
激しい口付けで上げられた体温が、意識を朦朧とさせ、足元を覚束なくさせる。
がくん、と膝から力が抜けた時、身体にふわりとした浮遊感を感じた。思わず小さな悲鳴を上げたけど、地面との距離を感じて身体を横抱きに抱えられたのだと理解する。
エレベーターはいつの間にか最上階へと着いていた。
三嶋社長は私を抱きかかえたまま、駆け込む様に寝室へと入り鍵を掛けた。私の身体はベッドの上へと下されて、素早く伸し掛かってきた彼の身体に再び拘束されてしまう。
激しい口付けの余韻で浅い呼吸を繰り返す私は、ぐったりとしたままスーツの上着を脱ぎ捨てる彼の動作を見つめていた。
動けない私の上で白いシャツ姿になった三嶋社長は、シュルリと衣擦れの音を響かせながら、首元のネクタイを引き抜いた。そして、それをあろうことか私の手首に巻き付ける。
「なに、をっ……っ」
「逃げない様に。君が、俺から」
昨夜見た、私に向けられた心配そうな瞳を打ち消すように、三嶋社長が酷く悲し気な顔をして微笑む。
両手を完全に拘束されて、ベッドの端へと繋がれた。
この後待ち受けているだろう行為を予想して、肌がぞくりと泡立つ。
―――逃げたわけじゃないのに、話を聞いてもらえない。
―――私の言葉が、彼に届かない。
繋がれた私を見て、三嶋社長が瞳を細める。長い指で顎を捕らわれ、貪る様なキスが再び落とされた。
重ねられた唇の糖度の高さに、意識がぼやけてまた前後不覚に陥って。
水音交じりの深く長い口付けを何度も角度を変えて繰り返されて、やっと終わりを迎えたかと思いきや、次の瞬間には熱い掌が私の胸元へと伸びていた。
「あっ――」
シャツのボタンが外され、胸元が空気に曝け出される。
直接素肌を撫でる熱い手が、私の背筋を震わせた。
「駄目!」
「最後まではしない。けれど触れるのだけは、拒ませない」
固く、断言する様な声が降ってくる。彼の顔が移動して、毛先が開いた胸元を擽った。
「……あっあぁっ!」
胸の頂きを含まれて、甘い嬌声が零れ出ると同時に身体が跳ねた。熱い口内とぬめついた感触に、痺れる様な快感が沸き起こる。膨らみを揉みしだく手と、胸元から脇腹を辿り首筋へと縦横に這って行く舌が、下腹部からせり上がる感覚を引っ張りだした。
駄目だと思うのに、身体は刺激を享受してしまっている。
その事に、羞恥と罪悪感が込み上げて、目端に熱い涙が滲む。
―――どうして。こんな。
三嶋社長のこの行為にも、それに感応してしまう自分にも、混乱して、思考がぐちゃぐちゃになって纏まらない。
嫌だと、やめてと、叫ばなければいけないのに、私の口がから漏れ出すのは、甘い響きを伴う音ばかり。
経験が無いわけじゃないのに。愛撫されているだけで、抵抗すら出来ない程どうしてこんな風になってしまうのか、わからない。
年齢相応に、経験はあるつもりだった。けれど三嶋社長から与えられる刺激はすべて、これまで感じた事の無いものだった。
啄む様な口づけが、何度も何度も肌へと触れて、その度に、私は反応して声をあげた。脳内がドロドロに溶かされていく様で、自分が快楽と言う奈落に落ちていく様で、恐ろしささえ感じてしまう。なのに、唯一動く脚さえも、抵抗の為に動かそうとは思えなかった。
昂ぶるだけ昂ぶらされて、生殺しにされている感覚に、どうしようも無くなって、潤んだ瞳で、彼を睨む。助けて欲しいのか、やめて欲しいのか、最早判断出来なかった。
滲む視界の中、三嶋社長が私を見下ろしている。その瞳には、苦し気な、切なげな色が浮かんでいた。
―――こんなに私を翻弄しておいて、どうしてそんな顔をしているの。
逃げ出したわけじゃないのに誤解して、こんな仕打ちをしているのに。
どうしてそんな、泣き出しそうな顔をしているの。
泣きたいのは、私の筈なのに。
「み、しましゃちょっ……」
「綺麗だ。ずっとそう思っていた。君をずっと……想っていたんだ」
囁きと共に、お腹の中心から心臓の当たりまでを舐め上げられて、身体が大きくびくんと跳ねた。
翻弄され過ぎた身体は過敏になっていて、愛撫だけで勝手に達してしまった様だった。
熱くなりすぎた肌の熱を、どうにか逃がしたくて私はぐったりと力を抜く。
すると、彼の喉仏が上下して、唾液を飲み込む音がした。
「このまま君を、身体だけ堕としてしまおうか。そうしたら君は、俺を恨むか……?」
答えを求めていない問いかけに、私はぼやけた視線だけを返して、ただひたすらに彼から与えられる刺激を受けていた。
繋がっているわけでも無いのに、何度も高みへ押し上げられて、私の意識は、何度目かの熱を吐きだすとともにふっつりと、闇の中へ途切れていった。
「あの、社長これには理由(わけ)が……っ!?」
連れ込まれるように入ったエレベーターの中、説明を聞いてもらおうと口を開いたけれど、同時に身体をぐいと引き寄せられて、よろめいた。
背中にどんっと壁がぶつり衝撃が走る。
同時に三嶋社長の黒い瞳が近づいて、噛みつくみたいに口付けられた。重なった唇から、熱過ぎる体温が伝わる。見開いた私の目に、彼の髪が一房、額に落ちてくるのが見えた。
どう、して……っ。
抵抗するのを許さないとでも言う様に、壁際に押さえつけられた身体は逃げる隙間さえ見当たらない。
「んぅ……っ!」
話がしたくて、力を込めて離れようとしているにも関わらず、彼の腕は微動だにしなかった。
その間にも、口付けは執拗さを増していく。
重なった唇を無理矢理こじ開けられ、熱い舌を押し込められて、パニックを起こしながら、息苦しさに喘ぐ様に呼吸した。僅かな隙間から酸素を取り入れるけれど、すぐに塞がれまた苦しさが込み上げる。
掴まれていた腕は頭上まで移動させられて、身動きが取れないまま、深い口付けに翻弄されていく。
彼に連れ去られる前にされたキスとは違う、性急で身体ごと奪われる様な感覚に、快楽と恐怖の二つが混ざった。
「んっ……ふっ……ぅんっ」
「帰りたいとっ……俺から逃げたくて、外に出たのか……っ!」
我を失ったかの様に、三嶋社長が低い声で吐き出した。荒い息が私の頬を震わせる。
スーツ越しだというのに、私の身体を覆う彼の肌は熱かった。
「ち、がっ……!」
「一週間だけ……っそれだけでいいと言ったのに……それすらもっ、受け入れては貰えないのかっ」
違うと言いたいのに、誤解だと、逃げたわけではないと伝えたいのに、塞がれた唇からはくぐもった声した出せなかった。
熱い舌で口蓋や歯列をなぞられ、口内を弄られて、次々と与えられる快感に頭も身体もついて来られない。
「やっ、待っ、て……っ」
「嫌だ。まだ駄目だ、まだ、君を手放すのは無理だっ!」
痛いほどの叫びが、耳朶に響く。
激しい口付けで上げられた体温が、意識を朦朧とさせ、足元を覚束なくさせる。
がくん、と膝から力が抜けた時、身体にふわりとした浮遊感を感じた。思わず小さな悲鳴を上げたけど、地面との距離を感じて身体を横抱きに抱えられたのだと理解する。
エレベーターはいつの間にか最上階へと着いていた。
三嶋社長は私を抱きかかえたまま、駆け込む様に寝室へと入り鍵を掛けた。私の身体はベッドの上へと下されて、素早く伸し掛かってきた彼の身体に再び拘束されてしまう。
激しい口付けの余韻で浅い呼吸を繰り返す私は、ぐったりとしたままスーツの上着を脱ぎ捨てる彼の動作を見つめていた。
動けない私の上で白いシャツ姿になった三嶋社長は、シュルリと衣擦れの音を響かせながら、首元のネクタイを引き抜いた。そして、それをあろうことか私の手首に巻き付ける。
「なに、をっ……っ」
「逃げない様に。君が、俺から」
昨夜見た、私に向けられた心配そうな瞳を打ち消すように、三嶋社長が酷く悲し気な顔をして微笑む。
両手を完全に拘束されて、ベッドの端へと繋がれた。
この後待ち受けているだろう行為を予想して、肌がぞくりと泡立つ。
―――逃げたわけじゃないのに、話を聞いてもらえない。
―――私の言葉が、彼に届かない。
繋がれた私を見て、三嶋社長が瞳を細める。長い指で顎を捕らわれ、貪る様なキスが再び落とされた。
重ねられた唇の糖度の高さに、意識がぼやけてまた前後不覚に陥って。
水音交じりの深く長い口付けを何度も角度を変えて繰り返されて、やっと終わりを迎えたかと思いきや、次の瞬間には熱い掌が私の胸元へと伸びていた。
「あっ――」
シャツのボタンが外され、胸元が空気に曝け出される。
直接素肌を撫でる熱い手が、私の背筋を震わせた。
「駄目!」
「最後まではしない。けれど触れるのだけは、拒ませない」
固く、断言する様な声が降ってくる。彼の顔が移動して、毛先が開いた胸元を擽った。
「……あっあぁっ!」
胸の頂きを含まれて、甘い嬌声が零れ出ると同時に身体が跳ねた。熱い口内とぬめついた感触に、痺れる様な快感が沸き起こる。膨らみを揉みしだく手と、胸元から脇腹を辿り首筋へと縦横に這って行く舌が、下腹部からせり上がる感覚を引っ張りだした。
駄目だと思うのに、身体は刺激を享受してしまっている。
その事に、羞恥と罪悪感が込み上げて、目端に熱い涙が滲む。
―――どうして。こんな。
三嶋社長のこの行為にも、それに感応してしまう自分にも、混乱して、思考がぐちゃぐちゃになって纏まらない。
嫌だと、やめてと、叫ばなければいけないのに、私の口がから漏れ出すのは、甘い響きを伴う音ばかり。
経験が無いわけじゃないのに。愛撫されているだけで、抵抗すら出来ない程どうしてこんな風になってしまうのか、わからない。
年齢相応に、経験はあるつもりだった。けれど三嶋社長から与えられる刺激はすべて、これまで感じた事の無いものだった。
啄む様な口づけが、何度も何度も肌へと触れて、その度に、私は反応して声をあげた。脳内がドロドロに溶かされていく様で、自分が快楽と言う奈落に落ちていく様で、恐ろしささえ感じてしまう。なのに、唯一動く脚さえも、抵抗の為に動かそうとは思えなかった。
昂ぶるだけ昂ぶらされて、生殺しにされている感覚に、どうしようも無くなって、潤んだ瞳で、彼を睨む。助けて欲しいのか、やめて欲しいのか、最早判断出来なかった。
滲む視界の中、三嶋社長が私を見下ろしている。その瞳には、苦し気な、切なげな色が浮かんでいた。
―――こんなに私を翻弄しておいて、どうしてそんな顔をしているの。
逃げ出したわけじゃないのに誤解して、こんな仕打ちをしているのに。
どうしてそんな、泣き出しそうな顔をしているの。
泣きたいのは、私の筈なのに。
「み、しましゃちょっ……」
「綺麗だ。ずっとそう思っていた。君をずっと……想っていたんだ」
囁きと共に、お腹の中心から心臓の当たりまでを舐め上げられて、身体が大きくびくんと跳ねた。
翻弄され過ぎた身体は過敏になっていて、愛撫だけで勝手に達してしまった様だった。
熱くなりすぎた肌の熱を、どうにか逃がしたくて私はぐったりと力を抜く。
すると、彼の喉仏が上下して、唾液を飲み込む音がした。
「このまま君を、身体だけ堕としてしまおうか。そうしたら君は、俺を恨むか……?」
答えを求めていない問いかけに、私はぼやけた視線だけを返して、ただひたすらに彼から与えられる刺激を受けていた。
繋がっているわけでも無いのに、何度も高みへ押し上げられて、私の意識は、何度目かの熱を吐きだすとともにふっつりと、闇の中へ途切れていった。