ページのすみで揺れていたもの
もう一度、手を伸ばす
次の日の朝、布団の中から顔だけ出して、天井をぼんやり見つめていた。
熱はまだ高いまま。
頭はぼんやりしていて、体も鉛みたいに重かった。
水を飲もうと動くだけで、汗がにじむ。
喉も痛く、目の奥がじんじんする。
(……動ける。でも……これ、独りでどうにかなるのかな)
何度も何度も「大丈夫」と言い聞かせてきた。
これくらいで助けを呼ぶなんて、って――
強がり続けてきた。
でも今は、ただひとつの声だけが
胸の奥で繰り返されていた。
『今すぐ行くから、電話切るな』
あの夜、震える声も、苦しくて何も言えなかった私を、
最後まで繋いでくれたあの言葉。
(……あの人なら....でも)
スマホに手を伸ばす。
たったそれだけの動作が、今日はやけに重く感じた。
画面を点けると、そこに表示された“藤澤 海”の名前が、
まぶしくて、切なくて――
なかなか通話ボタンを押せなかったが、なんとか勇気を振り絞り私は指を動かした。
呼び出し音。
心臓の鼓動が、それと一緒に早くなる。
「……はい、藤澤です」
聞き慣れた、でも久しぶりの声だった。
口を開こうとして、少しだけためらった。
だけど、今度は――言えた。
「……たすけて、ほしいです」
ほんの一言。
だけどそれは、私がずっと言えなかったすべてだった。
電話の向こうで、息をのむ音がしたあと、
彼はいつもの声で、でも少しだけ優しく返してきた。
『すぐ行く。……待ってろ』
私は、スマホを胸に抱えながら、
少しだけ涙をこぼした。
今度こそ――
ちゃんと、誰かに手を伸ばせた気がした。
熱はまだ高いまま。
頭はぼんやりしていて、体も鉛みたいに重かった。
水を飲もうと動くだけで、汗がにじむ。
喉も痛く、目の奥がじんじんする。
(……動ける。でも……これ、独りでどうにかなるのかな)
何度も何度も「大丈夫」と言い聞かせてきた。
これくらいで助けを呼ぶなんて、って――
強がり続けてきた。
でも今は、ただひとつの声だけが
胸の奥で繰り返されていた。
『今すぐ行くから、電話切るな』
あの夜、震える声も、苦しくて何も言えなかった私を、
最後まで繋いでくれたあの言葉。
(……あの人なら....でも)
スマホに手を伸ばす。
たったそれだけの動作が、今日はやけに重く感じた。
画面を点けると、そこに表示された“藤澤 海”の名前が、
まぶしくて、切なくて――
なかなか通話ボタンを押せなかったが、なんとか勇気を振り絞り私は指を動かした。
呼び出し音。
心臓の鼓動が、それと一緒に早くなる。
「……はい、藤澤です」
聞き慣れた、でも久しぶりの声だった。
口を開こうとして、少しだけためらった。
だけど、今度は――言えた。
「……たすけて、ほしいです」
ほんの一言。
だけどそれは、私がずっと言えなかったすべてだった。
電話の向こうで、息をのむ音がしたあと、
彼はいつもの声で、でも少しだけ優しく返してきた。
『すぐ行く。……待ってろ』
私は、スマホを胸に抱えながら、
少しだけ涙をこぼした。
今度こそ――
ちゃんと、誰かに手を伸ばせた気がした。