次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 達成さんがニヤリと笑う。

 ――なんだ、やっぱり冗談だったんじゃない……。

 彼に対して特別な感情を抱いているわけではないけれど、ほんの少しだけ悲しくなった。

 こういうところは昔から変わらない。私のことをからかったり、その気にさせたり。彼の一挙手一投足に振り回される私も、昔と変わらなかった。

「実は最近、見合い話が多くて」
「見合い話……?」
「身内が勝手に見合いをセッティングしてくるのです。ですから、いい人がいると言えば、潔く諦めてくれるかと」

 汗をかいたグラスを握っていたためか、彼の指からは水滴がしたたっている。それをおしぼりで軽く拭うと、彼はとんとんとカウンターを指先で弾いた。ハァ……と悩ましげなため息をつきながら頬杖をついている。

 よっぽど困っているのだろう。声のトーンや纏う空気が重くなった。

「お見合い話が来るなんて……。もしかしてたっちゃ……いや、達成さんって実はいいところのお坊ちゃんだったりして」

 仕事で海外に行くほどだ。身につけているスーツや小物も上質そうだし、タダモノでないことは見て取れる。
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