次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 私だって伊達にホテルのコンシェルジュをしているわけではない。人を見る目はあるつもりだ。
 もちろん、身に纏うものだけがすべてではないけれど、それなりに羽振りがいいお客様は持っている物も上質であることが多い。なによりも、このバーに足を運べる時点で、彼が庶民レベルの生活をしていないことは明らかだった。

「大したことはないですよ。まぁ、人より少し、いろんなものを持っている程度で」
「だんだん、あなたのことが信じられなくなってきたわ……」
「失礼ですね。真実だってありますよ」

 彼が再び私の方に向き合い、真っ直ぐこちらを見つめる。

 映画のワンシーンを切り取ったような美しい調度品に囲まれたバー、そして傷付いた心に染み込む幼馴染との感動の再会、彫刻のように綺麗な彼。

 あとひとつ私を狂わせるものがあるとするならば、お酒を口にしてしまったということだろうか。

 彼から再び「恋人になって欲しい」と言われたとき、私はこくんと頷いていた。

「……分かったわ。達成さんの恋人になる」
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