次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「こうしていると疲れも吹き飛びそうだ」
「本当に……?」
「嘘なんてつかないよ。記念パーティーのこともあるけど、最近は他のことでもいろいろと調整が大変で……」

 ぽつりと呟いた彼の声には覇気がない。きっと、私が想像していること以上に、いろいろあるのだろう。
 私も彼の頭を抱え、ぽんぽんと撫でた。

「たっちゃんはいっぱい頑張ってるよ」

 子どもじみたあやし方かもしれないけれど、今の私にはこれぐらいしかできない。
 ぽんぽんと頭を撫でていると、私を抱き締める彼の手が緩んだ。
 どうやら、眠ってしまったらしい。

「ゆっくり休んでね」

 目にかかった前髪をそっと掻き分けて、唇を近付ける。キスをしようか迷って、結局恥ずかしくてやめた。代わりに軽く手を握り、彼の寝息を聞く。
 少しの間、そうして彼が眠る様子を見守り、私は寝室を出た。

 相変わらず、リビングの方はごちゃごちゃしている。
 片付けようか迷ったものの、勝手に触ったらいけないような気がして、そのままにしておくことにした。
 ゴミだけはまとめておき、机に散乱している資料は手を付けずに部屋を出る。
 すると、誰かがこちらにやってくるのが見えた。さっと壁に寄り、頭を下げる。
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