次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「いずれにせよ、来週の創立記念パーティーで達成と紫苑寺家の婚約について発表する。だから、これ以上、達成に構うようならそれ相応の対応させてもらう」

 ぴしゃりと言い放たれて、私はひゅっ、と息を呑んだ。
 何も言い返せず、ただ深々とお辞儀をしてエレベーターホールへ向かっていく。

 そう遅くないうちに、彼との別れが来るかもしれないと身構えてはいたけれど、こんなにも早くそのときが来るとは思わなかった。
 ゆっくりと時間をかけて周りを説得すれば、認めてもらえるかしれないと思っていた自分が馬鹿らしい。

 鼻の奥がツンと痛くなるのを感じて、下唇を噛んだ。それでも目頭が熱くなって、気を抜いたら涙が溢れそうになる。

「……宮園さん。先ほどはありがとうございました」

 今になって、インカムから先ほど顧客対応したことの礼が飛んでくる。
 どういたしまして、と答えた声が悲しみで震えていないか、それだけが気がかりだった。
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