次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 ――な、なんでこんなことになってるの!?

 彼がこのホテルの最高責任者だなんて聞いていない。広瀬グループがロイヤル・ローズを運営していることは知っていたけれど、それと幼馴染が結びつくはずもない。
 広瀬なんてありがちな苗字だし、達成さんの両親に会ったのも随分前で、顔なんて覚えていなかった。

「ちょっと宮園さん、どういうこと!?」
「昨日、婚約破棄されたばかりですよね!?」
「それなのに、広瀬社長にアプローチされるって……!」

 近くにいたスタッフから矢継ぎ早に質問されて、私は何と答えていいか分からず曖昧な笑みを浮かべる。
 そんな私をよそに、あろうことか達成さんが私の前までやってきた。

「柚希さん、ここでもよろしくお願いしますね」

 にっこりと口角を上げて微笑む達成さんに、私は目眩がする。

 こんなことなら、昨日、期間限定の恋人になるなんて言わなければよかった。天地がひっくり返っても、彼と私とでは釣り合わない。縁談避けのためのカムフラージュだと分かっていても、私ではその役目を果たせそうにない。

 それなのに、彼は私の気持ちを知ってか知らずか、有無を言わさぬ圧で私の両手を握った。

「えぇ、よろしくお願いいたします、達成さん。それで早速、お話が……」
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