次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 なんとか私も笑顔を返し、昂りそうになる感情を抑えて、静かなトーンで話す。

 会議はここで終了となり、私は達成さんとあくまで仕事の話をするという形で、彼とともにカンファレンスルームに残った。

「それで、どういうことなの!? 私、達成さんがこのホテルの社長だなんて一言も聞いてない!!」
「でしょうね。言ってませんから。でも先ほどお伝えしましたよ? 僕がこのホテルの社長であること。ゆくゆくは、ロイヤル・ローズ全体を統括する立場になることを」
「だから、そういうことを言っているのではなく……!」
「では、なぜそんなに怒っているんです?」
「怒りたくもなるわよ! みんなの前で恋人だなんて……。あなたがここの社長だと知っていたら、期間限定の恋人にだってならなかったのに……!」
「それはなぜ?」

 ずいっと顔を寄せられて、一歩後ろに下がる。
 長身の彼から真顔で見下されると迫力がある。私が下がった分だけ彼も一歩踏み出してきたせいで、本能的にまた後ろに下がってしまった。
 そうして気付けば壁際まで追いやられていた私は、とうとう背中が壁にくっついた。

「僕の恋人は不満ですか?」
「不満はないけど……。ただ、婚約破棄されたばかりなのに新しい恋人がいるなんておかしいでしょ。それにただでさえ達成さんは……その、女性スタッフの人気を集めると言いますか……、注目の的と言いますか……」

 必ずや反乱が起こる。彼の存在は台風の目そのものと表現しても過言ではない。
 いろんな意味で風当たりが強くなりそうだと思っていると、達成さんがフッと吹き出した。
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