次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「達成さん、この部屋……」
「僕の部屋です。いま、この部屋に住んでいるんですよ」

 どの客室よりも広いこの部屋は、遮るものがないほど美しい夜景を眺められる絶好のロケーションだった。
 本来なら存在しないはずの玄関があり、その玄関がびっくりするほど広すぎる。景観を優先しているのか、廊下からでもリビングの奥にある窓がよく見え、さらにその奥の街並みもよく見えた。
 この部屋のどこからでも美しい夜景が見えそうだ。

「こんなところに一人で住んでるんですか?」
「はい。少し寂しいですけど、広さは申し分ないです」

 達成さんに連れられて、広すぎる廊下を進む。リビングに入ると、これまたVIPルームよりも高そうな調度品が並んでいた。

「柚希、そこのソファーに座って」

 座れ、と言われてもソファーすらも大きすぎて、どこに腰掛けていいのか分からない。

 真ん中に座るのは気が引けて、端の方を選んで座ったら革張りのソファーがキュッと鳴った。ほどよい弾力性のあるクッションが優しく体を包み込み、どこにも負担をかけない。これがベッドだと言われても納得して眠れそうなほど、座り心地がよかった。
 
「手当をするから、頬をよく見せて」
 
 隣に腰掛けた彼の手には救急セットがある。
 達成さんは私の顎先を指で押し上げると、顔を左右に振った。
 
「傷はここだけか……。ん?」

 彼が動きを止める。数回、瞬きをしたのち、口角を上げた。
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