次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「あ、れ……?」

 目を開けると、小野瀬様が達成さんの腕の中でぐったりしている。達成さんはニヤリと笑うと、男を部屋の奥まで引き摺り、ベッドに放り投げた。

「達成さん! 彼、大丈夫なんですか!?」
「少し眠らせただけですよ。目を覚ましたらすぐに警察を呼び、廊下の監視カメラ映像を警察に渡します。ちょうど、あなたに掴み掛かったシーンはばっちり映ってるでしょうから。あぁ、僕のことはご心配なく。部屋には監視カメラをつけていませんし、見えないように上手くやりましたから」

 聞いてもいないのに饒舌に語る彼に、私は後ろからそっと左手を握る。彼の拳は固く握られていて、手のひらに爪が食い込んでいた。

「……ありがとうございます。私のために、怒ってくれて」
「当たり前でしょう。誰だって怒ります」

 達成さんはジャケットを脱ぐと、私に押しつけた。

「これで前を隠してください」
「ありがとうございます」
「あぁ、頬に擦り傷ができていますね」

 彼に言われて、頬の痛みを自覚する。
 達成さんは苛立ちを押し込めたような、何とも言えない表情でこちらを見下ろすと、私の腕を強引に掴んだ。

 そのまま有無を言わさぬスピードで何処かへ向かって歩いていく。エレベーターに乗ってる間、達成さんはインカムで他のコンシェルジュに先ほどのことを引き継いでいた。

「さぁ、降りて」
「でも……」
「早く」

 言われるがまま、私は二十五階に足を踏み入れる。
 コンシェルジュですら、ほとんど立ち入らないエリアだった。VIPエリアよりも調度品が高級で、絨毯の毛並みも立っており、ヒールの底がいつもより深く沈む。

 そんなエリアを達成さんは迷いなく進み、一番景色のいい角部屋のパネルにキーをかざす。軽く背中を押されて中に入った私は、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
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