次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「……うん。なるべく心配かけないようにするね」
「約束して。何かあったら、すぐ俺を呼ぶように」

 そっと体が離れていくのと同時に、頬に彼の唇が当たる。それは、先ほど傷を負ったところの少し上あたりだった。

「い、いま……!」
「なんです?」

 すっかり、本来の仕事モードに戻ってしまった彼に、私は何も言えなくなる。
 頬の傷も手当てしてもらったことだし、持ち場へ戻ろうとしたけれど、スカーフもなければ、襟元のボタンが弾け飛んでいることにも気付いた。
 これではお客様のところへ、すぐには向かえない。

「どうしよう。予備の制服、家にしかないのに……!」

 スカーフと違い、ワイシャツは家に予備がある。このワイシャツもホテル特注のデザインで、襟元の形が普通のワイシャツよりも一回り小さかった。

「すぐに縫ってもらえば元通りになりますよ。予備のボタンもあるでしょうし」
「でも、シフトが……」
「大丈夫。あなたがいない間のシフトは別の者に入ってもらうよう、先ほど伝えておきましたから。数時間なら問題ありません。ですから、いますぐそのワイシャツを脱いで」
「へっ」
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