次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「分かりやすく目が輝いてる」

 くすくすと達也さんが笑って、クロッシュを開ける。
 中から出てきたのはパスタだった。サーモンとほうれん草、クリームで仕立てられたパスタで、粗びき胡椒と粉チーズが掛かったそれは匂いだけでも満足するほどの出来栄えだった。

「こっちのスープとライスコロッケもおいしいですよ」

 どうやらいろいろ頼んだようで、とてもじゃないけれどひとりでは食べ切れない。シェアしたとしても、パスタだけでお腹がいっぱいになりそうだった。

「達也さんはよく食べるんですか?」
「えぇ。基本的にここから出られませんから」

 メインのパスタをくるくると巻きながら達也さんが言う。

 達也さんがどういう経緯でロイヤル・ローズ東京の社長に就任したのかは分からない。だけど、ある日突然社長になったからには、いろいろとやる事が山積みになっているのだろう。
 再来月に行われる周年記念パーティーに、改修工事の計画。
 もう既に周年記念パーティーの概要は決まっているものの、まだまだ準備することは多く、社長である以上、把握せねばならないことも多いはずだ。

 以前の社長は、ほとんどこちらに顔を見せなかった。あくまでロイヤル・ローズ全体の統括者であって、現場の経営は総支配人に一任されていた。
 だから、わざわざホテルの中で生活し、現場にも積極的に顔を出す達成さんは、社長の姿としては珍しい。計画だって総支配人に丸投げしてもよいはずだ。

 だけど、そうしないのは何か事情があるのだろう。引き継いだばかりだから、内情を知るためにも人一倍、頑張っているのかもしれない。

「あまり、無理はしないでね」

 彼が幼馴染だから、とか、仮の恋人だから、とか、そういった肩書きを抜きに、頑張る彼を支えたいと素直に思えた。

「ありがとう。でも今が頑張り時だから」
「何かあったら言ってね。私、力になるから!」
「頼りにしてる」

 彼が笑って、私の頭をぽんと撫でる。
< 56 / 150 >

この作品をシェア

pagetop