次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 今の時間はあまり出入りがないのか、扉が頻繁に開け閉めされることがない。むしろ、ホテルの裏口は大通りに面していない方にあるため静かだ。

 日が沈み、そろそろ星が瞬きはじめる頃である。春から夏に向かっていく夜の風は少し生ぬるかった。
 達成さんと出会ったときも、別れたときもこの時期であったことを思い出しながら、ぼんやりと遠くの空で光る星を見つける。

「たっちゃん、まだかなー……」

 意識が昔に引きづられて、子どもの頃のあだ名を口にしたときだった。
 従業員入り口の扉が開いて、達成さんが出てきた。

「お待たせしました、行きましょう」

 私を見下ろす彼は、記憶にある彼よりも随分美しく育った。目線だって同じぐらいの高さだったはずなのに、今では見上げるほど大きい。
 目の下のほくろは、子どもの頃、あったっけ。

 夜空に浮かぶ星を探すように、今の彼と記憶の中の彼とを見比べていたら、ずいっと顔を近づけられた。
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