次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 達成さんが目をぱちくりとさせて私を見る。無言で見つめられて、私は耐えきれずに勢いよく椅子から立ち上がった。

「もう! 無言にならないでよ!」
「すみません、つい……大きなお腹の音にびっくりして」
「生理現象ですー! 昔からお腹が空くとフラつくの。今日はお客様対応でお昼食べられなかったし、いつもはすぐに何か口にできるようなものを持っているんだけど、切らしちゃったみたいで……」

 きゅるきゅると音が鳴るお腹を押さえるも、食べ物の話をしていたらさらにお腹が空いてしまった。

 恥ずかしい気持ち半分、早く何か口に入れたい気持ち半分。

 私はやけっぱちになって、もういいでしょ!? といつもより強引に会話を切り上げようとした。

「なら、一緒に食事でもどうですか?」
「へ……?」
「ちょうど僕もこのまま休憩に入る予定ですし。気になるお店があったのでちょうどいいです。従業員入り口を出たところで待っていてください」
「でも……」
「僕もすぐに支度してきますから」

 まだ行くともなんとも言っていないのに、彼が先に部屋を出ていく。
 こうと決めたときの彼の強引さに慣れつつある私は、仕方ないとため息をつきながら部屋の明かりを落とした。しっかりとカンファレンスルームの戸締まりをしてから、更衣室で私服に着替え、言われた通りに従業員用の入り口で達成さんを待つ。

 先ほどロッカーの中を漁ったら飴玉が出てきたので、今はさっきのようなお腹の音もおさまった。糖分を摂ったからなのか、体もフラつかない。
 だけど、まだまだお腹が満たるはずもなく、私は従業員入り口の横で彼が来るのを待っていた。
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