次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「達成さん、離して」
「ダメです。あなたが自ら僕を招き入れたんですから」

 肩に顔を埋められ、背中に腕を回される。
 いたずらのつもりなのか、背中にかかる髪を軽く引っ張られた。かと思ったら、指で丁寧に梳かれる。
 そんなことを繰り返されているうち、段々瞼が重くなってきて、自分の格好のことなどどうでもよくなってしまった。

「柚希」
「ぅん……?」
「柚希はまだ、俺のこと、ただの幼馴染だって思ってる……?」
「んー……」
「子どもの頃のまま、止まってる?」

 優しい声が鼓膜を震わせる。とろとろとした眠気に抗えず、私は曖昧な返事を繰り返した。

「お願いだから、俺のことをちゃんと男として見て」

 懇願するような声で達成さんが言う。

 達成さんのことは大切な幼馴染だと思っている。もう二度と会えないかもしれないと思っていた彼と再び出会えて、こうして一緒にいることもできて、この上なく幸せだと思っている。

 それに、ちゃんと彼のことを大人の男性だと認識している。というより、意識せざるを得ない。
 ぐんと伸びた身長も、低くなった声も、大きな手も、記憶の中の彼とは違って大人の男になっていた。

 ――私、たっちゃんのこと、ちゃんと男として見てるよ……。

 そう、伝えたかったけれど、強い眠気には抗えず、私は目を閉じた。
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