次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「もう業務終わりますよね? 少しだけ部屋で休んで行きませんか?」
「社長が積極的にサボりを推奨してどうするんですか。まだ三十分あるのに」
「では、コンシェルジュの仕事として僕の相手をしてください」

 何が何でも部屋に上げたいのか、彼に引っ張られてソファーまで連れて来られる。
 相変わらず大きすぎるソファーは大人二人分の重さを受け止めても、大きく軋むことはなかった。

「紅茶を出しますね」
「あっ、私がやりますよ! 使っていいものを教えてくれれば」
「あなたはお客様でしょう?」
「いえ、今はコンシェルジュとしてここに居るんですから、達成さんがお客様です」

 どちらも相手がお客様であることを譲らず、結局二人でキッチンへ向かった。

 前回、キッチンには行かなかったけど、こうしてシンク側に立つとかなり広々としていることが分かる。そうでなくても部屋自体が広く、リビングは大きなソファーとローテーブル、食事をとる用のダイニングテーブルとテレビが備え付けられていた。
 壁には絵画や季節の花が飾られ、さながらモデルルームのようだ。自分の部屋を思い浮かべて、少しだけ虚しくなった。

「紅茶ですが、好みの味はありますか?」
「好み……ですか。あまり明るくなくて……」
「ならば、僕の好みで淹れます」

 達成さんが棚から英字がプリントされた黒い紅茶の缶を取り出す。私が紅茶を飲むときはいつもティーバッグだったため、茶葉から入れるのは始めてだった。
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