次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「随分、本格的……」
「そうでもないよ。茶葉で淹れてはいるものの、温度や蒸らしの時間は感覚なことも多い。でも、この茶葉は熱すぎてもいけないかな」

 いつも飲んでいるのか、手慣れた様子でポットに茶葉を入れ、湯を注いでいる。蒸らすまでの間、しっかりカップを温めるあたり、とても適当とは思えなかった。

「もういい時間だ」
「じゃあ、私が入れるね」

 カップの中の湯を捨て、トレイにティーセットを乗せてソファーに戻る。
 ソファー前のローテーブルにカップを並べ、オレンジに色づいた透明な紅茶を注いだ。

「いい香り……」
「落ち着くだろう? この香りが好きなんだ」

 先ほどのやつれきった表情が和らいで、自然と彼の目元も優しくなる。
 私は香りを楽しんでから紅茶に口をつけた。すっきりとした味わいで、飲みやすい。

「おいしい……疲れが吹き飛びそう」
「それならよかった」

 疲れた体に芳醇な香りと温かさ、深みのある味が染み渡る。本来、ゆっくり飲むものなのだろうが、気付いたらカップが空になっていた。
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