次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「た、達成さん!?」

 オートロックなため、すぐに後ろの扉が施錠される。
 私を見下ろす彼の目はいつもとは違い濁りを帯びており、無意識のうちに後ずさってしまった。

「なんです? 僕が怖いですか?」
「そういうわけじゃ……」
「じゃあ、逃げようとしないで」

 トンと扉に手をつかれ、囲まれてしまう。
 達成さんは私の顎を持ち上げると、暫く見つめたのち、盛大なため息をついた。

「……疲れた」

 そう言って、私の肩にぐりぐりと頭を押しつけてくる。
 大型犬が飼い主に甘える仕草とそっくりだ。ふわふわな毛はないけれど、何となく撫でるべきところな気がして、私はそっと彼の頭を撫でた。

「お疲れ様です、達成さん」
「本当に疲れました。もう消えてなくなりたいほどです」
「ダメですよ! ホテルはどうなるんですか!」
「冗談ですよ」

 くすくすと笑って、彼が私の背中に腕を回す。ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられて、少しだけ背骨が軋んだ。
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