愛とプライドとバベルの塔
そして、ノートや新入学用の筆箱や鉛筆などの文房具が詰め込まれている重たい台車を売場に三台出すと、一つ一つダンボールを開き、キュンパスの5冊入ノートやジャパニカ学習帳などがびっしりと詰め込まれていて、わたしは一気に魂が抜けたような気分になった。
文房具売場の端の方には、新入学期用品を置く売場が設置してあり、わたしは三谷さんに「ノートは重たいので、僕がやりますから、筆箱や鉛筆類は小田桐さんにお願いしてもいいですか?」とお願いされた。
「あ、それから、これ。」
そう言って、三谷さんが渡してくれたのはスマホ型の機械だった。
「これでJANを読み取れば、棚の位置が分かるので使ってください。」
眼鏡をかけて少しぽっちゃり気味の三谷さんは、柔らかい口調でそう言ってくれ、わたしは「ありがとうございます。」とその機械を受け取った。
あとから分かったのだが、その機械はHHTというらしい。
「そういえば、一階は大丈夫なんですか?」
作業をしながら、わたしが三谷さんにそう訊くと、三谷さんは「下には阿久津さんが居てくれてるので大丈夫です。混み出したら、呼ばれるかもしれませんが、、、その時は小田桐さんに一人にしてしまいますが、すいません。」と申し訳なさそうに言った。
「それは、仕方ないので、わたしが頑張ります!」
と言っている時、早速三谷さんの電話が鳴ってしまった。
三谷さんは「うわぁ、、、」と呟きながらも「はい、三谷です。」と電話に出て「分かりました、すぐ戻ります。」と言って電話を切った。
「すいません、サイクルが混んで来たみたいで、、、」
「大丈夫ですよ!ここは、わたしは何とか進めておきますから!」
「無理しなくていいので、出来るところまでやったら定時で帰っていいですからね!」
三谷さんはそう言うと、急いで一階へと戻って行った。
今は三月、、、そりゃあ、みんな自転車に乗り出す時期だから、サイクル売場が忙しいのは当然だよね。
そういえば、サイクル売場って人員何人居るんだろう、、、
同じ部署のはずなのに、分からない、、、
あ、そういえば、出勤したらマグネットをつけるホワイトボードに三谷さんと阿久津さんの他に二人くらい名前があったような、、、
そんな事を考えながら、作業を進めているとレジカウンターから「小田桐さーん!」と南田さんがわたしを呼ぶ声が聞こえて来た。