キスしたら、彼の本音がうるさい。
「……ねえ」
「ん?」
「私たちって……なんなんだろうね」
「なんって……急にどうした」
「わかんない。ただ、最近よく一緒にいるし、こうやって普通に部屋に来たりして……」
「それが変?」
「ううん、変じゃない。でも……名前がつかない関係って、なんか不安になるんだよ」
瑛翔は少しだけ黙ったあと、湯気の立つマグカップに視線を落とした。
「名前がついたら、安心できる?」
「……少しは」
「でも、名前って……つけたとたん、壊れることもあるよ」
その言葉に、胸の奥が少しだけざわめいた。
そういうところ──ずるいなって、思ってしまう。