隣の部署の佐藤さんには秘密がある
「父さんは、兄さんにやらせたかったんだよね。」

 父は水伊勢に貢献していない自分には何も期待していない。

「龍司にモデルは無理よ。雑誌のインタビュー記事で言われた通りにカッコつけるのが限界。」
「そうかな。兄さんはなんでもできるから……」

「晃太から見たらそうなのかもしれないわね。龍司、結婚するのよ。その相手がクロードの親会社のご令嬢なの。」
「だからクロード……」

「お父さんは龍司に花を持たせたかったんだと思うけど、あの壊滅的な私服の龍司を知らないのよ。」
「スーツのブランドなら良かったのにね。」

「それでも龍司にモデルはできない。龍司は、言われたことをちゃんとこなすタイプ。仕事も結婚もお父さんに言われたら「はい、そうですか。」ってできる。でもモデルってそういうのじゃないから。晃太の方が向いてる。」

 親が決めた相手と結婚させられるなんて考えられないし、父の指示をなんの躊躇もなく遂行することはできない。龍司はそれで平気なのだろうか。

「人の生き方ってそれぞれだから。龍司はあの生き方が心地いいんだと思うわ。私は合わなかったから家を出た。晃太もそう。だから何も気にすることない。晃太には晃太の生き方があるんだから。」

 自分は龍司のようには生きられない。けど、あかねの言う通り人それぞれだ。龍司にはそれが合っていて、自分は合わないというだけだ。
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