隣の部署の佐藤さんには秘密がある

13.佐藤さんの秘密

 私は柱の影から黒塗りの車が走り去るのを見送った。しばらくするとスマホのバイブ音がバッグの中から聞こえてきた。きっと佐藤さんだ。

 黒塗りの車で執事が迎えに来るなんて普通の家ではない。電話に出れば教えてくれるかもしれない。気になるなら聞いてしまえばいいと思うのに、電話に出ることができない。

(どうして教えてくれなかったんだろう……)

 レセプションの時もそうだった。本当の姿は違うのに隠していた──

 鳴りやみそうにないバイブ音がようやく止まり、私はよろよろと立ち上がった。顔を上げると時計のある花壇が見えた。待ち合わせした時は、こんな気持ちになるとは思わなかった。BARで話していた時はすごく楽しかったのに。

「そうか……健斗さんなら何か知ってるかもしれない。」

 私はBARへ向かって走った。
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