隣の部署の佐藤さんには秘密がある
17.写真を見る修行
「佐藤さん、大丈夫ですか?疲れてますよね?」
「ちょっとね。」
先週は私も忙しかったけど、佐藤さんの部署はそれ以上だったと思う。無理はして欲しくないけれど、撮影を休むわけにはいかないだろう。
「明日、クロードに冊子が出るって。」
「明日ですか!?早いですね。」
ついに佐藤さんの顔が世に出る。堂島屋のクロードは佐藤さんで埋め尽くされるのだろうか。BARに着くと佐藤さんは帽子を健斗さんに渡した。
「健斗、これありがとう。」
「少しは役立ったか?」
「うん。だいぶ。」
健斗さんの帽子は何の変哲もない普通の帽子だけど、佐藤さんが被っているときはブランド品のように見えた。モデルってすごい。
カウンターにはReserveの札が2つ置かれている。佐藤さんと並んで座ると、健斗さんは間髪入れずにグラスを置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
健斗さんはにこやかに微笑んで、他のお客さんのところへ行ってしまった。BARは満席で混雑している。ここにいるお客さんたちを、健斗さんは1人でまわしている。バーテンもすごい。
「今日の写真、見たい?」
「えっと……その前にどんなシチュエーションで撮ったのか聞いてもいいですか?また公園デートですか?」
「今日はおうちデート。部屋の中だったよ。」
まさかの予想的中だ。
「でも今日の写真は見せるべきなのかちょっと迷ってるんだよね。」
佐藤さんは被写体として完璧だ。見せたくない写真があるなんて意外。でも無理に見せてもらう必要はない。クロードのショップに出た写真を見ればいいだけだ。
「無理しなくていいですよ?」
「いや、見せたいとは思ってるんだ。待受にしてもらいたいからさ。」
「それなら……」
私はそれとなくスマホの画面を佐藤さんに向けた。今の私の待受は海デート中の佐藤さんだ。
「変えてくれたの?」
「土日くらいはいいかなと思いまして……」
「やっと犬に勝った……」
「勝つとか負けるとかじゃないですよ。」
写真を直視できるかできないかが問題なのだ。
「待受にしてもらえるなら見てもらおう。えっと、これならいいかな。送るね?」
「……はい。」
佐藤さんから写真が送られてきた。でもすぐには開くことができない。待受にしている海デートの写真を見られるようになるまで1週間かかった。新しい写真はまたゼロから免疫をつけなければならない。
「届いた?」
「はい。来てます。」
「どう?」
「ちょっと待ってください。気持ちを整えていますから。」
「どういうこと?」
「準備をしてるんです。」
「なんの準備?」
「写真を見る準備です。」
私はスマホを握りしめた。
「ちょっとね。」
先週は私も忙しかったけど、佐藤さんの部署はそれ以上だったと思う。無理はして欲しくないけれど、撮影を休むわけにはいかないだろう。
「明日、クロードに冊子が出るって。」
「明日ですか!?早いですね。」
ついに佐藤さんの顔が世に出る。堂島屋のクロードは佐藤さんで埋め尽くされるのだろうか。BARに着くと佐藤さんは帽子を健斗さんに渡した。
「健斗、これありがとう。」
「少しは役立ったか?」
「うん。だいぶ。」
健斗さんの帽子は何の変哲もない普通の帽子だけど、佐藤さんが被っているときはブランド品のように見えた。モデルってすごい。
カウンターにはReserveの札が2つ置かれている。佐藤さんと並んで座ると、健斗さんは間髪入れずにグラスを置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
健斗さんはにこやかに微笑んで、他のお客さんのところへ行ってしまった。BARは満席で混雑している。ここにいるお客さんたちを、健斗さんは1人でまわしている。バーテンもすごい。
「今日の写真、見たい?」
「えっと……その前にどんなシチュエーションで撮ったのか聞いてもいいですか?また公園デートですか?」
「今日はおうちデート。部屋の中だったよ。」
まさかの予想的中だ。
「でも今日の写真は見せるべきなのかちょっと迷ってるんだよね。」
佐藤さんは被写体として完璧だ。見せたくない写真があるなんて意外。でも無理に見せてもらう必要はない。クロードのショップに出た写真を見ればいいだけだ。
「無理しなくていいですよ?」
「いや、見せたいとは思ってるんだ。待受にしてもらいたいからさ。」
「それなら……」
私はそれとなくスマホの画面を佐藤さんに向けた。今の私の待受は海デート中の佐藤さんだ。
「変えてくれたの?」
「土日くらいはいいかなと思いまして……」
「やっと犬に勝った……」
「勝つとか負けるとかじゃないですよ。」
写真を直視できるかできないかが問題なのだ。
「待受にしてもらえるなら見てもらおう。えっと、これならいいかな。送るね?」
「……はい。」
佐藤さんから写真が送られてきた。でもすぐには開くことができない。待受にしている海デートの写真を見られるようになるまで1週間かかった。新しい写真はまたゼロから免疫をつけなければならない。
「届いた?」
「はい。来てます。」
「どう?」
「ちょっと待ってください。気持ちを整えていますから。」
「どういうこと?」
「準備をしてるんです。」
「なんの準備?」
「写真を見る準備です。」
私はスマホを握りしめた。