隣の部署の佐藤さんには秘密がある
「健斗、さきが見てくれないんだ。準備してるとか言って。」

 さきは何かにじっと耐えるようにスマホを操作するかしないかという動作を繰り返している。健斗は思わず吹き出した。

「大変ですね、さきさん。」
「健斗さんは佐藤さんの写真を見たことがありますか?」
「先週の写真は見ましたよ。」
「これですか?」

 さきは、待受画面の写真を健斗に向けた。

「ははは、待受にしてるんですね。よかったな、晃太。」
「この写真を見られるようになるまで1週間かかりました。またゼロからスタートすると思うと……そうだ、健斗さん。先に見て頂けませんか?どれくらいの衝撃なのか教えてください。」
「いいですよ。見せてみろ。」
「えー、なんで健斗に……」

 晃太は健斗に写真を見せた。
 
「これは前回の写真に比べたら衝撃は少ないですよ。遠いですし、横顔です。」
「そうなんだ……」

 さきは写真を開いた。窓際で佇む晃太の写真は相変わらず爆イケではあるが、前回の写真に比べたら衝撃は少ない。

「晃太、お姉さんに勧められた写真はこれじゃないだろ?」
「あれは見せられないよ。無理しなくていいってさきも言ってくれたから。」

「お姉さんのお勧めは気になる……さきさん、見ても良いですか?」
「いいですよ。」
「だからなんで健斗に見せなきゃいけないんだよ。」
「ほら、見せろ。さきさんの許可が出た。」

 晃太はあかねから彼女に送れと言われた写真を健斗に見せた。

「───!」

 健斗は口を押さえて後退りした。
< 72 / 120 >

この作品をシェア

pagetop