隣の部署の佐藤さんには秘密がある

19.疲労困憊

 スマホを見ると磯山から着信があった。昼休み、晃太は会社の外へ出て電話をかけた。

「磯山さん、仕事中はかけてこないで。」
「申し訳ございません。会長よりお話があるためお戻りいただきたいとのことでございます。」
「何の話かわかる?」
「週末のお仕事のお話かと思います。」

 晃太は電話を切ると、あかねに電話をかけた。

「姉ちゃん、いま大丈夫?」
「晃太?どうしたの?」
「父さんがモデルについて話があるみたいなんだけど、何か聞いてる?」

「晃太の仕事を増やしたいらしいわよ。晃太は別の仕事をしてるからって言ったんだけど……」
「増やしたら土日だけじゃなくなるよね?」

「そうね。兼業は大変だし、お父さんに言われたからって無理にやる必要ないわ。でも晃太の写真はすごく評判が良い。それは自信を持っていいからね。ごめん、もう行く時間だから切るね。」

 今の仕事をやめてモデルに専念しろと言うのだろうか。それは、水伊勢の仕事をしろと言われているのと同じだ。モデルの仕事は嫌ではないが、やらなくて良いならやりたくない、今まで通りさきと同じ会社で働いていたい。電話を終えると、さきはランチから戻ってきたところだった。

「私、先に戻ってるから!じゃあね!」
「え?ちょっとみゆき!?」

 さきの隣にいる声の大きい友人は、視野がとても広いらしい。

「ごめん。俺がいたからだと思う。」
「佐藤さん!大丈夫ですか?疲れてますよね……?」

 顔は見えないはずなのに、さきは疲れているとわかってくれる。さすが彼女。未来の奥さん。

「スーツ頼める?いつでもいいから。」
「わかりました。今日行けると思います。売り切れたら困りますもんね。」
「ありがとう。」
< 77 / 120 >

この作品をシェア

pagetop