隣の部署の佐藤さんには秘密がある
 仕事帰りに佐藤さんが載っている雑誌を買おうと本屋へ向かっているとスマホが震えた。電話の相手は磯山さんだった。

「はい、宮島です。何かあったんですか?」
「お話があります。堂島屋のコーヒーショップへ来ていただけますか?」
「はい、わかりました。今行きます。」

 その日も佐藤さんは会社を休んでいた。だから、佐藤さんに何かあったのかと思った。でも違う話だった。

「宮島様、申し訳ありませんが、晃太様とのお付き合いを解消していただけませんか。」
「えっ……」

「晃太様のお父上が、晃太様の婚約者様をお決めになられるとのことでございます。」
「あ、あぁ……そう……ですか……」

 私は膝の上で手を握りしめた。後で手を見たら爪の跡が残っていた。それくらい力いっぱい握りしめていた。

「…………わかりました。」

 佐藤さんは水伊勢家のご子息だ。私のような平民と付き合っていてはいけない。磯山さんの前では耐えられたが、店を出た途端に涙が溢れ出した。泣きながら帰宅して、その日は夜通し泣き続けた。
< 93 / 120 >

この作品をシェア

pagetop