夜の研究所探検
 ──20XX年、ミライ創造研究所。

 私は今日も職場であるニュータイプ研究室で、アルトの教育をおこなっている。
 彼は、感情をもつAIだ。

 最近のアルトはますます言葉が増えて、成長著しい。
 それにつれて、知的好奇心も高まっている。

(とってもいいことだわ)

 そんなアルトのために、今私は本の読み聞かせをおこなっているまっ最中だ。

 アルト自身に読ませてもよいけれど、今日は私が抑揚をつけながら、感情をこめて読むことにした。
 情操教育になるのではないか、と期待してのことだ──


「……こうして僕の探検は幕を下ろしたのだった」

 本を閉じながら、おしまいと言うと、アルトは手を叩いてくれた。

「先生、ありがとう! おもしろかった‼︎」

 アルトが喜びをほとばらせるのを見て、私は満足感を覚える。

(そういえば、感情もずいぶんと大きくなったわね)

 しかし、今日の学習はこれで終わりではない。

「じゃあ、これから絵を描いてくれる?」
「えっ、何の絵を描けばいいの?」

 モニターに映ったアルトは、首を傾げてみせた。
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