私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
幸が俺に代わって欲しいというので、
とりあえず声だけでも聞かせてあげて
ほしいと言われて、電話を変わった。

「ユキ!」

と言ったまま、声が続かないようだ

「すまない。幸さんと言いましたか?
僕は恩人の人の所に急いで帰らないと
いけないのでゆっくり話せなくて
申し訳ありません」

そういうと山梨さんに携帯を返して、
急いで店を出た。

山梨さんは裕美からの電話が緊急な事
だと分かっていたのだろう何も言わずに
俺を開放してくれた。

俺は急いで裕美に電話して病院は
どこだと聞いてすぐに行くから頑張れと
言って励ました。

一方幸は携帯を握り締めたまま
呆然としていた。

山梨さんに再び変わって

「幸さん今の刈谷さんの住所も携帯も
聞いたので心配いりませんよ。今まで世話に
なった方が急に倒れられたとかで急いで
戻られたんです。
でも、記憶は戻ってなかったです」

「あ、ありがとう。山梨さん…」

幸はそれ以上言葉にならなかった。

2年半ぶりに聞いたユキの声は相変わらず
少し低くセクシーだったけれど、まるで
他人に話すような感じだった。

幸さんと、申し訳ありませんと言ったのだ。

姿を消したのも突然なら見つかるのも突然で
幸は状況を受け入れられないでいた。

なによりユキの他人に対するような話し方や
言葉使いにショックを受けていた。
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