私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない

裕美は手紙を読んで悔しくて泣いた。

ケンは裕美を妹と言ったのだ。

ケンは幸を愛していると何度も言っている。

裕美もケンを愛しているのだ。

ケンは裕美の王子様なのだから、記憶を
なくしたままでいてほしかった。

妹と言われて本当に悔しかった。

でも、裕美は諦めたくなかった。

ケンに女として認めてもらえるように
幸さんから奪ってみせる。

そう思っている。

だから東京まで付いていくのだ。

母は、“ケンが記憶を取り戻したら、
結婚しているかもしれないし恋人が
いるかもしれないんだから、
もしそういう事ならケンを家族や
恋人の元に返してあげないと
いけないよ”と、よく言っていた。

でも、母が死んでしまって一人になった今
ケンと離れるのは嫌だ。

一人では生きていけない。

だから、ケンに愛されるように頑張って
みようと決めたのだ。

東京で新しい生活が始まったらきっとケンも
裕美の事をちゃんと女としてみてくれるに
違いないと思おうとしているのだ。

幼馴染の泰樹には何度も結婚しようと
言われているが、ケンを愛している裕美は
頷けないでいる。

もう少し待ってと言っているのだ。

泰樹をスペアーにしているのは
分かっているしそんな自分が汚く思えるが
ケンに体当たりして自分を受け止めて
もらえたらと思っているのだ。

やってみなければわからない。